【書評】決めて断つ ぶれないために大切なこと(黒田博樹)


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「漢気」と言えば、の元広島カープ黒田博樹さん。

転職(≒独立)を見据え、会社に辞意を伝える直前に読んだ本。独立かサラリーマンか、という悩みを、ヤンキースか広島か、で頭を悩ませた黒田さんに重ねようとしたわけで、甚だおこがましいですが。笑

 

まずは気になった内容をピックアップ。

1勝で自信が持てるなら、その自信は1敗であっという間に失われてしまう

「自信は与えられるものではなく自分が地道に積み重ねた結果得られるものだ」

 

仕事で、例えばプレゼンがうまく行ったとか、上司に褒められたとか、一喜一憂しがちなのです、なぜ上手く行ったのか/行かなかったのか、自分の基礎能力が上がっているのか?を冷静に、客観的に見つめ続けることが非常に重要。1度の成功に驕ることなく、1度の失敗を引きずることなく、成功確率を少しでも高め、いかにそれを継続させられるか?ということを考えながら何事にも取り組みたいと思います。

 

「目の前の目標にこだわる」こと、これだけだ。長いスパンで高い目標を立てる人がいると思うが、粘り強くない自分に、それは出来ない。だから僕は短いスパンで、自分の手が届く目標を立てて、それに向かって努力していく。そのほうが少しは「粘り強く」、頑張ることができた。

高い目標を持つことも大事ですが、目の前の目標の方がもっと大事ということですね。簡単ではないけど、めっちゃ頑張れば手が届く、そんな適切なレベルの目標を立てること。これが非常に難しかったりするのですが。

 

 試合前のブルペンでは、背番号「18」の倍数、36球しか投げないことに決めた。たとえ、最後の36球目にとんでもない球を投げたとしても、いくら納得できなくても必ずそこでやめる。投手経験者ならお分かりいただけるだろう。ブルペンで納得がいかない球を投げて切り上げるときほど、不安で、気持ちの悪いものはない。どうしてももう1球投げたくなる。納得した状態でマウンドへ向かいたい、と思うのだ。

(中略)

ブルペンの36球。そこでじっとこらえ、それ以上投げない勇気を持つ。ブルペンへの比重を減らし、納得するまで投げるという習慣を捨てることー。これは、メジャーに適応するために行った、重要な頭の切り替えだった。

「体を整えるために心技を捨てる。そう発想を変えることがとても重要だった」

 優先順位を明確にして、最優先事項のために「大事だけど優先順位が劣るもの」を思い切って削ることの大切さ。私も昔はピッチャーだったので、ブルペンを納得しないまま終了することの気持ち悪さはすごく分かります。この決断がいかに勇気のいることだったか。。。

どうでもいいですが、投げることに決めた36背番号の倍数、というところも地味に好き。笑

 

「断つ」ことや「捨てる」勇気というのはなかなか出ないものである。長年積み重ねたものであるならばなおさらだ。

それでも、上のレベルに挑もうとする際には、ときに必要なことである。

一歩上に行くために必要な勇気。会社を辞めれば、高い給料、安定した環境、世間的な地位などを捨てることになりますが、いずれはそれらを取り返して余りあるほどの成功、満足できる人生を手に入れてみせる。

 

僕はもう少し、自分が楽に、楽しく野球をやれたらいいと思ったりした。一方で、楽しい野球をやってしまったときに、それまで自分が培ってきた野球のスタイルが変わりそうで怖いという気持ちもあった。これもまた正解がない話で、楽しくやったらもっといい投球ができるかもしれない。しかし、失敗するかもしれない。そうなると、ある程度自分で結果を残してきたスタイルを続けたほうが成功の確率が高いからそのままになってしまう。

(中略)

何度か書いたが、結局、自分を練習に駆り立てるモチベーションとは、「怖いから」ということに集約されている。打たれることに対する恐怖心。自分がダメだったときの恐怖心。すべては恐怖心から逃れるために練習を積み重ねていく。 

この本でなんども出てきた「苦しみ」や「恐怖心」「責任」という言葉たちー。これらすべては、勝利を掴んだときや、組織に貢献できたときの達成感、そういった「一瞬の喜び」の為のエネルギーだと僕は思っている。だから苦しいことも我慢できるし、乗り越えられる。

「苦しまずして栄光なし」

苦しみの先に必ず、栄光があると信じているからこそ、前に進めるのだ。

個人的には、「恥ずかしい思いをしたくない」という思いがモチベーションの源泉になるのかなと感じていますが、恐怖心も恥ずかしさも、それらを被った自分をリアルに想像し、それを何としても現実にさせない、回避するんだ、という強い思いで頑張るしかないですね。

 

難しいと思ったのは、選択肢は2通り、3通りと用意されているのだが、どれが正解かはまったく分からないことで、しかもひとつの道しか選べない。思うに、ひとつの道を選ぶには徹底的に考え抜くことが必要だ。それが正解とは限らないわけだが、それでも自分で決めた以上、「あれだけ考えたのだから、これが正解だ」と思わなければやっていられなくなる。いや、むしろ自分の選んだ道が「正解」となるように自分で努力することが大切なのではないかと思う。

決断前は徹底的に考え抜いて、決断したら、あとは後悔しないように頑張るだけ。頑張れ、自分。

 

最後に感想ですが、迷った時はこうしよう、とか、決断するための分かりやすいHow toが書いてあるわけではなく、ある意味、これほどまでの覚悟が必要なのか、、、と恐怖も覚えます。一方で、黒田さんでもこれほどの悩みを抱えているのか、その中で考え抜き、妥協せずに努力し続けられているからこそあれだけの実績を上げることが出来たのだな、また、実績以上に人の心を揺さぶるものがあるのだな、と。自分ももっと頑張らなくては、と思わせてもらえる内容でした。