【書評】住まいの解剖図鑑(増田 奏)
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今春から、とある団地でフルリノベーションに挑戦します。
元々2DKだった間取りを全部壊して、スケルトンにした上での引き渡しなので、床から壁から、全部自分で作り上げる必要があります。よく言えば自由。
自由を求めてフルリノベに挑戦するとは言え、ど素人な私は、完全自由と言われるとどう動き出して良いか分かりません。
そんな中、その団地(我々と同じ棟)ですでにフルリノベを行い、超絶素敵なお家に住まれている方が借してくれたのが以下の本。
副題の「心地よい住宅を設計する仕組み」にもある通り、住宅の様々な要素が「何のためにあるのか」「なぜそうな形になっているのか」「作る時は何に気を付ければ良いのか」が一つ一つ丁寧に解説されており、まさに今の私にぴったりの本でした。
特に「なるほど!」となった部分を以下にピックアップ。
ドア(P. 38)
- 内開きが原則。これは廊下を誰かが歩いているとぶつかって危ないから。
- 但し、例えば納戸のドアは例外。中に置いてあるものが邪魔をして開閉しづらくなるため、外開きや折れ戸、引戸でもOK。
- トイレのドアは、内開きだと中で倒れた人を助け出すことが困難になる可能性あり。外からドアを外せるようにしたり、引戸にしたり。但し引戸の場合は遮音性が弱くなる。
ダイニング(P. 52)
- 食事に必要な広さは、一人「幅60cm、奥行き80cm」程度
- 奥行き80cmの内訳は、机部分が35cmと人部分が45cmで、つまり座って食べるには机から45cm分のスペースが必要。さらに、椅子を引くには+30cm(計75cm)、誰かが後ろを「すり抜ける」には+45cm(計90cm)、同じく「通り抜ける」には+75cm(計120cm)を確保すべき。
- 隣の人との感覚(自分の椅子の中心から、隣の人の椅子の中心)は、最小60cm。
- 差尺(テーブルの高さ - 椅子の高さ)は27cm前後。
キッチン(P. 56)
- 冷蔵庫、シンク、コンロ、まな板の4点セットは
冷蔵庫 - シンク - まな板 - コンロ
の順番に並んでいるのが使いやすい。理由は、料理の手順が
①「冷蔵庫から食材を取り出す」
②「シンクで洗う」
③「まな板で切る」
④「コンロで調理する」
であり、これに合わせて配列するのが良いから。
収納(P. 72)
- モノを「出たがりやすさ」で分類すると分かりやすい。
- 常時:いつも出たい(文房具やよく着る衣類、普段使いのカバンなど)
- 随時:なるべく出たい(たまに着る衣類やスポーツ用品など)
- 一時:引っ込み思案(スーツケースや季節のお着物、思い出の品など)
- 収納は、モノの「出たがりやすさ」に合わせると分かりやすい。常時はオープン棚、随時はガラス棚、一時は戸棚、など。別の例では、クローゼットの扉の取手にかけるのが常時、クローゼット内部の手前やハンガー、もしくは扉の裏側が随時、ハンガーの奥の棚が一時。
- 常時は吊るしておくのも一つ(玄関にコートとか、フライパンを吊り戸棚のしたとか)。
- 男性用衣類の収納に必要なスペースはおおよそ縦がmax 135cm、横がmax 55cm。
- 女性用衣類はおおよそ縦がmax 155cm、横がmax 45cm。(男性用よりも細いが、ロングドレスなど縦が長いモノも)
- ウォークインクローゼットは、イメージほどの収納力なし。また、普通のクローゼットには「取り出しやすい」というメリットがある。
- しまわなくても、片付いていれば(見た目が整っていれば)OK。
排水(P. 97)
- 排水菅の内側からのにおいを遮るのに用いられるのが「排水トラップ」。排水管をUの字に曲げて、そこに最新の排水が一定量溜まるようにすることで、その先から来るにおいを遮断するもの。便器の中の水もこの要領。
- 同一の排水経路に2箇所以上のトラップを設けてしまうと、トラップ間の空気がクッションとなって排水できなくなる恐れがある。
窓(P. 122)
- 窓の目的は「視認(窓の外を眺めたいか)」「採光(明るさが欲しいか)」「通風(風を通したいか)」の3つで考える。これら3つについて、それぞれ「Yes or No」の2通りがあるため、窓は全部で8種類(2 × 2 × 2)の機能が考えられる。この内、全てが「No」なのはただの壁なので、窓は7種類に分類される。
- 「視認」を実現するのは、窓の位置。すなわち目の高さに配置すれば良い。
- 「採光」の実現には、窓の透過性、つまり透明にするかどうか。
- 「通風」を決めるのは開閉の可否。
- 例えば、「視認」と「採光」がYes、「通風」のみNoの場合は、"透明なはめ殺しの腰窓(透明で光が通り外も見えるが、開閉できないため風は通らない)"が具体例として挙げられる。
- カーテンやブラインド、障子は透過性を調整するための装置。
窓や排水については今回のリノベの対象外なので将来のための備忘。
ダイニングや収納など、最低限必要なスペースと快適に暮らすためのスペース、それぞれの機能を考えながら間取りを考えたいと思います!